目的に応じた貸事務所の使いわけ
不動産所得か否かの判断所得税法第26条によれば、「不動産所得とは、不動産、不動産の上に存する権利、船舶又は航空機(以下「不動産等」という。)の貸付け(地上権又は永小作権の設定その他他人に不動産等を使用させることを含む。)による所得(事業所得又は譲渡所得に該当するものを除く。)をいう」。
なお、不動産又は船舶若しくは航空機の貸付業は事業所得を生ずる事業から除かれている(所令63)から、これらの貸付けを事業として行っている場合においても、当該事業から生ずる所得は不動産所得となり事業所得とはならない。
匿名組合における財産の帰属は、法形式的には営業者に帰属し、匿名組合員には帰属しない。
その結果、匿名組合員は法形式的には不動産等を有していないことになり、上記の定義を斜酌すれば、匿名組合から分配された所得は不動産所得に該当しないことになるとの見解が生じる。
ただし、この場合には、組合員の現物出資は、すべて営業者に対する譲渡として課税対象となると考えられる。
また、不動産所得に分類されたとしても、当該不動産の貸付けか事業として行われているか否かにより、資産損失の必要経費算入額など課税上重要な問題があり、事業であるか否かの判定も重要となるが、その取扱いが明確となっていない。
3.事業所得か否かの判断事業所得については、所得税法第27条において「事業所得とは、農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業で政令(所令63)で定めるものから生ずる所得(ただし、山林所得又は譲渡所得に該当するものは、除かれる)をいう。」と規定され、事業の範囲については、所得税法施行令第63条で「@農業、A林業、B漁業及び水産養殖業、C鉱業(土石採取業を含む。)、D建設業、E製造業、F卸売業及び小売業(飲食店業及び料理店業を含む。)、G金融業及び保険業、H不動産業、I運輸通信業(倉庫業を含む。)、J医療保険業、著述業、その他のサービス業、K上記のもののほか、対価を得て継続的に行う事業」と規定され、不動産、船舶、航空機の貸付業は、除かれている)。
「対価を得て継続的に行う事業」とは、具体的には、「自己の危険と計算において独立的に営まれる業務で、営利性、有償性を有し、かつ反復継続して遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められるもの)」、あるいは「その判断においては、単に当該取引行為の営利性、有償性の有無、継続性、反復性の有無、すなわちのみならず、事業としての社会的客観性の有無が問題とされるべきであり、この観点からは、当該取引のための人的、物的設備の有無、資金の調達方法、取引に費やした精神的、かつ、肉体的労力の程度、その者の職業、社会的地位などの諸般の事情を斜酌せざるを得ない1」のであり、一般的にはこれらが基準としてあげられているが、この基準を匿名組合の段階で判断するのか、又は個々の匿名組合員の段階で判断するのかという問題がある。
既述したように、匿名組合員が匿名組合から分配される所得は、共同事業組織の一員として受ける当該組合の事業の所得の一部とも考えられるし、一方では匿名組合への出資に対するリターンすなわち一種の資産所得としての性格を有するとも考えられる。
そのアプローチ如何によって匿名組合員が個人の場合には、その所得区分の判断、したがって、課税所得の計算に影響を及ぼすことになる。
匿名組合員に分配される所得の性格に関する所得税法基本通達36.37共一21は、原則として営業者の営業の内容に従って所得区分としている点で、営業者と匿名組合員との間で形成された一種の共同事業として捉えるアプローチを原則的には用いているといえるが、但し書き以下で出資に対するリターンという見解も示されている。
上記の事業所得の意義を基準に、典型的な匿名組合員について考えてみる。
匿名組合の営業に関しては営業者が単独の事業として、独立して自己の計算において営業を行っている。
通常、匿名組合員は業務執行権を有しておらず、単なる出資者であり、上記基準で掲げられている「営業に関して取引のための人的、物的設備や取引に費やした精神的、肉体的労力など」が見い出されず、その結果、このような匿名組合員は、組合事業における地位や役割等を勘案し、実質的な立場からみた場合、営業者と同様の事業を行っているとは言いがたい。
つまり、匿名組合員は単なる出資者の地位に止まり、出資に対する利益の分配を期待するだけの存在とも考えられ、当該所得は一種の資産的所得としての性格を有し、出資の対価であるとの見解も生じてくる。
租税特別措置法に基づくいわゆる法人の土地譲渡重課税制度の規定(措法63)の適用上、任意組合と匿名組合とで異なった取扱いをしており、匿名組合の場合は営業者に譲渡利益金額の全額が帰属するものとしている。
また所得税法及び法人税法の国内源泉所得に関する規定においては、匿名組合等の利益分配金を資産の運用、保有から生ずる所得の一つとして位置付けている(所法161−、所令280@四、法法178−、法令177@四)し、消費税法においては、匿名組合の営業に係る消費税については、匿名組合員ではなく、営業者が納税義務者となる。
また匿名組合の出資者が持分の譲渡に係る消費税に関しては、有価証券に類するものの譲渡として取り扱われている。
このように、匿名組合員の所得の性格をどのようなものとみるかは、各税法等において解釈が必ずしも統一されていない。
さらにはこれまで既述してきた任意組合と匿名組合は、民商法の規定に基づくいわば典型を前提としており、実際には関係者の間の具体的な契約内容の如何によって、両者をかぎりなく接近させることも可能である)。
そこで、任意組合や匿名組合の所得の区分を考える場合、それぞれの典型をもとに判断すべきか、あるいはその契約の実態によるべきか、という問題も生ずる。
その他の課題匿名組合の出資持分に関する相続税評価額の算定方法、匿名組合契約解除時等の所得区分、物件売却時の所得区分など、不明確な点が多い)。
(注)l)匿名組合に関する多くの有益な問題点が指摘されている。
2)昭和24年頃の金融が極度に梗塞していた経済情勢を背景とし、それを緩和する方法として株主相互金融方式とともに匿名組合方式による大衆からの資金調達が行われ、次第にこの方式が増加する傾向にあった。
この種の出資者の所得課税を適正に執行するために、所得税法第210条が昭和28年法律改正により新たに設けられ、「匿名組合契約等に基づく利益の分配」が源泉徴収の対象にされた。
3)匿名組合員が10人以上存在する点を除いて、その要件は商法上の匿名組合契約と同様に解せられる。
4)出資の相手方を商法上の営業活動をする人(営業者)に限定せず、事業を行う者としている。
5)最判昭和37.10.2昭36(オ)第1254号、税資36号938頁、同趣旨最判昭和36.10.27昭35(オ)第4号、税資35号797頁。
6)不動産特定共同事業法に関する通達「不動産特定共同事業法の運用について」第三(2)Fで、「匿名組合契約にあっては、所有権は営業者に帰属する点に留意すべきであること」が明示されている。
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